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~体験交流型観光の向こうに広がる無限の可能性に向けた伴走支援~

株式会社とト屋・一般社団法人京丹後龍宮プロジェクト(京都府京丹後市 宿泊業 従業員数4名 資本金1,000万円)

日本海に付き出した丹後半島の間人(たいざ)で宿泊業を営む株式会社とト屋は、「心をほどく体験と心が躍る蟹と魚」でファンを獲得してきた。しかし、カニによる誘客がピークを過ぎたことに加え、国内観光地の競争激化などから間人を訪れる観光客が減り、地域全体での新たな観光戦略が求められていた。支援チームは伴走支援を通じて当該旅館の自走化を促し、豊かな自然と地域の人々と触れ合う体験交流型観光で観光客に癒しと感動を提供する「京丹後龍宮プロジェクト」の取組に繋げた。


本事例のポイント

【販路開拓支援を地域への交流人口増加の糸口に】
当該旅館のある京丹後市は、夏季の海水浴、冬季のカニを中心とする二季型の観光地だが、観光客は平成10年をピークに年々減少。有名観光地に挟まれて観光客の滞在時間は短く、インバウンド需要も少ないなど厳しい状況にあった。こうした状況も踏まえ、当該旅館への販路開拓支援を通じた地域への交流人口の増加をテーマに、「地域一体となった事業への展開」と「新たな体験コンテンツの事業化」の2つの課題を掲げて伴走支援を行った。

【自ら体験メニューを開発し、成功体験を重ねる】
多様化する顧客ニーズに対応していくため、「誰に」「何を」「どのように提供したいのか」「どのような宿になりたいのか」といった将来像(自社のありたい姿)について対話と傾聴を繰り返した。社長の根元にある改革の動機やこれまでの経験を棚卸しすることで、当該旅館だけでなく地域一体となった事業と捉えて取り組む必要性が見えてきた。その足掛かりとして、当該旅館でできる体験メニューを自ら開発。インストラクターによる実践などで小さな成功体験を幾つも重ねた結果、向かうべき方向性の確信や自信が生まれ、成功を共有することで支援チームとの信頼関係も向上していった。

当社の背景

平成13年の旅館オープン以来、冬は「間人蟹(たいざがに)」、夏は透明度の高い海の魅力とともに丹後地域の海や山の幸が堪能できる「うまし宿」をコンセプトとして丹後の食材、地域の食文化に特化した食と交流の旅を提供しリピーターを確保してきた。

しかし、旅行ニーズの多様化や長引くデフレ、経済不況などから日帰り旅行が増加し、宿泊業としての転換期を迎えていた。また、これからの事業展開として、風景や食だけで訴求し続けることは困難であると考えられた。新規顧客やリピーター獲得のためには体験型やテーマ型など付加価値の高い旅の目的や魅力を創造する必要があり、ターゲットを絞り込んだ丹後地域らしい旅行サービスを開発し提供することを悲願としてきた。

支援の流れ

【異業種同士の連携で新たな体験コンテンツを事業化】
当該旅館の成功体験を積み重ねたのち、次のステップである異業者を巻き込んだ地域連携による取組を開始。交流人口の増加をテーマにした住民セミナーを企画・実施したところ、様々な事業者から反響や共感が得られた。事業者をインストラクターとする体験プログラムの開発に当たっては、従来の「ボランティア型体験」から「ビジネス型体験」への転換が重要であり、そのための気づきと問いかけ、提案を繰り返し、新たな体験コンテンツの事業化に成功。また、体験コンテンツの事業化に伴って、京丹後市商工会独自の補助金制度「意欲ある異業種同士の連携事業に対する補助制度」を企画・立案・導入し、販路開拓と補助制度の同時並行で伴走支援を続けた。

【当該旅館の伴走支援を地域の「持続的発展」に繋げる】
しかし、事業規模が大きくなるにつれて、各事業者の方向性や支援レベルにバラつきが見え始め、気がつけば事業者同士の「足のひっぱり合い」によって、これまでの取組が無駄になりかねない状況に陥っていた。そこで、当該一連の事業を「点」ではなく「面」と捉え、「未知なる海の京都・丹後の魅力をマイスターが直伝する『丹後マイスターツーリズム』の開発と提供」というテーマで、国からの法認定を目指す事業計画策定支援を実施。国からお墨付きをもらうことで、地域全体で向かうべき方向性が確定・共有でき、地域の「持続的発展」に繋げるきっかけになった。

認定後はアフターフォローアップ支援として、体験プログラムのブラッシュアップとインストラクター養成等に注力。国や府の施策を活用した独自のモニターツアーや商談会も開催した。

【地域一体となった取組を通じて自走化を実現】
このようなことを繰り返し行う中で、当該旅館はさらに自信を深め、任意団体「京丹後龍宮プロジェクト」を創設。近隣に点在する体験プログラム、行政や他地域をも巻き込んで自らで走り出した。現在は「一般社団法人京丹後龍宮プロジェクト」として法人化し、旅行業登録も行って観光客のワンストップ型総合受入窓口として運営している。

支援チームはアフターフォローアップ支援の一環として、プレスリリースによる広報支援や、Google 検索・Googleマップ検索を活用した事業展開を支援。教育デジタルマップと、そのマップに紐づける教育デジタルパンフレットの作成支援にも注力し、当該旅館と共に教育旅行の獲得を目標に体験プログラムのブラッシュアップと DX 化に取り組んでいる。

※詳細については、一連の支援と支援結果を奮闘記として纏めた別添資料(地域活性化奮闘記―観光編―)を参照

地域活性化奮闘記―観光編―

伴走支援の効果

「京丹後龍宮プロジェクト」だけで約50種類の「ほんもの体験」プログラムを開発。徐々に観光客も増加していき、コロナ前は全盛期に近い年間 220 万人(前年比 30 %増)にまで回復した。特に外国人観光客は顕著な増加を見せ、「ココでしか提供できない価値の創造」として確立し始めている。地域の事業者の中には、体験インストラクターの事業化を機に事業承継に成功した事業者もあり、海外の展示商談会に積極的に参加する事業者も増えている。今後は、これまでの取組で蓄積されたデータ等を活用してポータル型サイトを構築すると共に、新たに「物販部門」を構築し更なるビジネス化へと支援を行っていく。

   

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