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~震災を乗り越え「こだわり豆腐」で創業100年を目指す豆腐店の取組~
企業名非公開 従業員数4名 資本金1,000万円
宮城県南部の太平洋沿岸に位置する亘理町で豆腐、油揚げを製造して75年余り。地元スーパーや直売所などを取引相手に事業を続けてきた当該企業は、東日本大震災で工場が被災。取引先の大半を失うが、2代目社長の強い意志で事業の立て直しを図ることとなり、亘理山元商工会と連携した取組がスタートした。補助金制度を活用した総菜工場の新設やネットショップの開設支援などで事業強化と販売力の底上げを図り、知名度向上と売上アップに繋げた。
本事例のポイント
【基本戦略の構築に向けたヒアリングの実施】
社長は評判の良い惣菜事業が、核家族化の時代に合った事業の柱になると考えていた。しかし、惣菜商品は豆腐工場の片隅で製造し、作業効率が悪いことから抜本的な対策が必要だった。「事業承継・引継ぎ補助金を活用しながら新しい工場を建設し事業の立て直しを行いたい」と商工会に来館。商工会は宮城県商工会連合会とチームを組み、社長の考えを深堀りして傾聴することから伴走支援をスタートした。
【売上拡大のための3つの事業戦略を策定】
どんな商品をどのように作れば売上拡大に繋がるのか、自社の強みや弱みを踏まえた事業戦略を立てることを商工会が提案。社長は「祖父の代から続く歴史ある事業を未来に繋げ、創業100年を目指したい」という強い想いがあり、ヒアリングを通して具体的な検討を進めることになった。その結果、直売所等で評判が良く、需要が期待できる惣菜を主要な柱に磨き上げることや、大手メーカーとの競争で薄利多売となっている豆腐商品を収益性の高い商品にしていく方向性が確立。課題解決に向けて「惣菜事業の強化」「ネットショップの活用による販売力の強化」「収益率の高い豆腐作り」の3つを主要戦略に掲げた。
当社の背景
1948年に豆腐店として創業した当社は、2010年から移動販売を開始するが、東日本大震災により工場設備は大きな被害を受け、取引先の1/3が消失。移動販売先の個人宅も半減したことから赤字決算が続いていた。そのような中、当時専務であった現社長が「このままでは終われない」と、豆腐マイスターの資格を取得。宮城県豆腐商工組合青年部長として様々な商工会の事業にも参加し、黒字化の見込みが立ってきた2019年8月「食で地域を笑顔にしたい」との想いから45歳で事業を承継した。以来、おいしい豆腐を作ることに専念し、宮城県や全国の品評会に出展するなど積極的に活動。しかし、核家族化の時代において売上は伸び悩み、「おいしい豆腐を作れば喜ばれ、売れる」という自身の考えに疑念が生じる。「現在の商品群でよいのか?」「価格競争の著しい豆腐業界でどのように対応していくのか?」といった、事業の根幹的な課題に直面していた。
支援の流れ
【惣菜事業の強化と既存事業の見直し】
事業計画シートやSWOT分析を行い、自社の現状をとらえた事業戦略を立てることで惣菜事業のコンセプトをブラッシュアップした。惣菜工場の新設と作業体制の構築を行うとともに、既存事業の見直しを図るため、宮城県商工会連合会のサポーティングリーダーと連携。事業承継・引継ぎ補助金の申請に必要な事業計画書を作成し、採択になったことから補助金を活用した取組を実施することとなった。
具体的には、自社の強みを生かした「豆腐屋が作るヘルシー総菜」というコンセプトの新商品開発。弱みであった作業効率の改善においては、部門ごとのリーダー配置により作業体制を見直したほか、売上割合の低いこんにゃく部門を廃止し、老朽化した既存工場の解体と加工場の新設を行った。自社の直売所と隣接した場所に加工場を新設したことで生産体制が整備され、「揚げ出し豆腐あんかけ」「豆乳マヨネーズサラダ」「豆乳わらびもち」など、豆腐屋ならではの特色ある新商品の開発がしやすくなり、生産性の向上に繋がった。
【ネットショップの売上アップのための施策】
東日本大震災で減少した従業員がなかなか増えず、直売所の営業時間や移動販売の回数を減らさざるを得ない状況になっていたことも当社の課題だった。このためモール型ネットショップへの出品を始めたが、売上は伸びなかった。そのような状況を改善し、惣菜事業の販売力を強化するため、WEB制作やYouTubeチャンネルなどの指導実績がある指導員と連携しながらチーム支援体制でWEBサイトの制作やネットショップの開設を支援。社長自らがこれらの制作を行ったことで、自社のこだわりを盛り込んだ「SNS、WEBサイト、ネットショップ」の3本の情報発信ツールが完成し、販売促進の仕組が構築された。
【宮城県産の原料を使った「こだわり豆腐」作り】
社長は惣菜事業の強化の傍ら、収益性の高い付加価値のある豆腐作りにチャレンジしていた。創業100年を目指す上で、地元大豆や宮城県産の塩を使った「こだわり豆腐」の開発は、それを愛してくれる消費者のためにも大きな使命だった。開発を進めるうち、強い加熱ができる専用の「無消泡煮沸釜」を使用することで、こだわり豆腐の開発や生産性の向上が実現できることが判明。社長と意見交換し、生産性や品質向上効果はもとより、残業時間短縮や経費削減による利益率向上と販売機会の創出にも繋がると見極め、持続化補助金の申請支援を行って「無消泡煮沸釜」が工場に設置された。
伴走支援の効果
商工会との連携によって、社長自らが「ヘルシー豆腐惣菜」の開発などの実践的な取組を開始。さらに、生産体制の見直しを図ったことで従業員の商品力・生産力が向上し、常時10種類を超える商品作りが可能となり、商品の認知度アップにも繋がった。また、売上の半分を担う油揚げ類の油を国産100%米油に切り替えるなど、お客様の健康に配慮した企業というブランディングに成功した。
ネットショップでは、モール型ネットショップ時代からの売上が2倍となっただけではなく、当社の知名度が全国に広まり、マスコミにも取り上げられたことで「豆乳入りわらび餅」や「豆マヨ」などの人気商品化に繋がった。惣菜事業の売上は、前年比25%アップ、事業全体でもマイナスだった利益を黒字に転換することができた。
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