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~スタジオ写真に付加価値を!後継者を主体とした写真館の取組~

三原屋写真館(鳥取県湯梨浜町 サービス業 従業員数2名)

スマートフォンやデジタルカメラによる撮影が日常化する中、地域の写真館やフォトスタジオが置かれている状況は年々厳しさを増している。鳥取県湯梨浜町にある当該写真館も例外ではなく、若手後継者を中心とする経営体制の改善が求められていた。しかし、後継者はまだ若いがゆえに経営に対するビジョンなどが確立されていないことから、事業継承を見据えて後継者の自発的行動を促しながら、事業計画の策定支援と着実な実行に向けた伴走支援を実施した。


本事例のポイント

【従来型の記念写真や証明写真からの脱却】

支援前の価値は、記念写真や証明写真における「満足感のあるプロの写真の仕上がり」だった。支援後は、撮影体験や写真を介して笑顔になってもらいたいという明確な想いから、「写真撮影までのワクワクを楽しんでもらう」「撮影する時間をひとつの体験として心に残るものに」など、付加価値のあるサービスの提供を掲げて営業を展開。目の前の業務に追われて成果に繋がらない経営から、攻めの経営へと転じるきっかけを作った。

【後継者の想いに寄り添い、販促活動を支援】

事業の方向性を確立するため、経営者・後継者夫婦を交え協議を行った。その上で、後継者を中心とした事業展開を図ることが共有され、売上の増加策と経費削減、生活費の削減等による利益の確保を実行していった。後継者が経営者としての覚悟をもって経営にあたるための努力に寄り添い、そのサポートに努めた。特に、今まで撮影プラン作ってきたこともあるものの販促が課題であったため、具体的な販促活動を支援。既存のお客様の声を聞き、自社の強みを把握し、SNSや地元広報誌を活用して販促を行った。

当社の背景

地域の写真館として、七五三や成人式などスタジオ撮影を中心に営業。スタジオ整備や写真技術を磨くなど内部的な向上に取り組んではきたが、デジタル化やチェーン店の攻勢といった急激な外部環境の変化の中での積極的な対応を取っていなかった。時代に対応するためには、後継者が中心となった店づくりが必要であったが、後継者はまだ若く、事業承継を漠然と考えていたことや、何に取り組んでよいのかわからず目の前の課題対応しかできていない状況が続いていた。

支援の流れ

【商工会との関係性を土台にした問題点の洗い出し】

経営者とは商工会会員として長年深い繋がりがあり、後継者も青年部員として商工会に関わっていたため、顔の見える関係性は出来上がっていた。近年、経営に関しては後継者を中心に行われていたが、目先の業務対応がほとんどであり、自社の置かれた状況の把握や中長期的な視点での経営意識は低かった。従来のスタジオ写真中心に写真技術や付随するサービスを向上させてきたが、記念写真や証明写真といった顧客の希望するサービスや価格の基準は昔から変わっていなかった。デジタル革命が起こる中、旧来型写真業に必要な改革改善に着手していなかったことや、積極的な営業を行って来なかったこと、売上計画を策定したことがなかったことなどが原因で経営状況が悪化していたが、当時は原因を把握する方法もわからない状況であった。

【営業力の確保と財務管理の適正化のための経営改善支援】

資金繰りが悪化していたため、まずは金融機関と連携し借入返済をストップ。その間、現状分析を行い経営悪化の原因を調査した。借入返済には売上を増加させる必要があることから、新事業を含めた経営改善計画を策定。借入返済計画や新事業計画を確実に実行していくためには家族全員で取り組んでいく必要があったが、経営者夫婦と後継者夫婦間でうまくコミュニケーションが図られている状況ではなかったため、商工会が間に立って経営者夫婦と後継者夫婦に別々にヒアリングを行うなど、それぞれの想いや立場、意識の違いを洗い出し、一つずつ全員で意識共有を図るようにした。その結果、後継者夫婦中心で事業を行っていくこととし、事業承継計画を作成。後継者のモチベーション向上及び事業計画を具体的に取り組むための手順を説明し、理解してもらった。

【既存事業の効率化と作業の分散化を推進】

しかし、実際には目の前の仕事で手一杯で、新しいことに取り組むことができない状況が続いていたことから、その要因を探るため現在の業務や作業時間について聞き取りを実施。その結果、全般的に感覚で経営していることがわかり、既存事業の効率化と作業の分散化を進めることとした。業務の中で、付加価値を生むものと生まないものを分別することが重要で、付加価値を生まない作業を廃止し、その他の作業も業務内容によって外注や自社においても誰が作業を行うかを振り分けていく必要性を理解してもらい取り組んでもらった。実行力に欠けてうまく成果につながらないこともあり、後継者が自信を失っていた時は励ましながら継続支援を行うなど定期的に取組状況を確認し、状況に応じてフォローを行った。

伴走支援の効果

既存事業の効率化を図り、新たな事業に取り組む下地ができた後、お客様にとっての付加価値は何かを考え、新たなサービス「ぼくのわたしの頑張った大賞」を企画した。お子さんが保育園や学校で1年間頑張ってつくった作品を、写真スタジオの壁いっぱいに、家族で楽しく飾りつけ表彰する、というステキな思い出をカタチ(写真)に残す体験型の撮影サービス。サービス企画から販促実施までの一連の流れを体験し、「待ちの経営」から「攻めの経営」へ転換する第一歩を踏み出した。経理においては当初より税理士に依頼して毎月試算表が出る状態であったが、後継者がそれぞれの数字の意味を理解できていなかった。定期的な支援の中で経理状況と普段の業務の関連性を理解し、以前の業況と目の前の業況を数字で把握し、今後の計画に反映できるようになった。取組の結果、2022年には増収増益を達成。支援を開始した2018年と比較し売上が19%アップし、返済原資も確保することができた。

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