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〜経営ビジョンの策定を通じて社内の成功体験を蓄積〜

佐々木畜産株式会社(北海道帯広市 食肉加工業 従業員数50名 資本金5,000万円)

就任後間もない新社長のお悩みに寄り添いながら、社内のプロジェクトチームが一丸となった「企業理念・ビジョンの策定」の支援を行った。ビジョン自体の策定だけでなく、策定まで至ったという成功体験がチームメンバー間で共有されたことが一つのポイントである。ビジョン策定のプロジェクトが完了した後も、プロジェクトチームとしての活動は継続し、webサイトリニューアルや経営戦略の策定等、派生的な取組が行われている。また、本事例は2020年8月~2021年10月の間、経産局の伴走支援で課題設定を行った後、支援担当者を同じくしたまま中小機構のハンズオン支援に引き継ぎ、集中的な支援を行った案件である。両事業の円滑な連携もポイントとして挙げられる。


伴走支援の概略

本事例のポイント

【信頼関係の構築】
特定の課題の解決として入る既存のコンサルティング支援と異なり、経営者との対話を行いながら課題設定を進めるという伴走支援のアプローチについて、支援開始当時、社長は、これがどのような支援なのか、どこまで支援してくれるのかのイメージを掴みにくい様子であった。そのため、まずは幅広く社長の悩みや課題感を伺いながら、具体的な支援トピックとしてビジョン策定というプロジェクトとして集約させていった。

【社内の仲立ち】
ビジョン策定については、社長以下、社内プロジェクトメンバーの自律的な動きを後押ししつつ、前社長(会長)に対してプロジェクトの必要性や進捗状況等について支援者側から丁寧に説明を行い、社内での合意形成の後押しを行った。

当社の背景

当社は70年以上にわたり、十勝地域で⾷⾁の加⼯及び販売、家畜の⽣体販売、配合飼料・単味飼料の販売を行う企業である。過去に牛肉の自由化やBSE問題といった外部環境に直面しながらも順調に利益を積み上げている。一族経営の企業であり、現社長(三代目)は伴走支援の約1年前に就任したばかりであった。

支援の流れ

【新社長のお悩み、不安に寄り添う】
特定の課題の解決として入る既存のコンサルティング支援と異なり、経営者との対話を行いながら課題設定を進めるという伴走支援のアプローチについて、社長は、これがどのような支援なのか、どこまで支援してくれるのかのイメージを掴みにくい様子であった。そうした中で、支援者は、事業承継後1年を経た中での社長のお悩みや不安に寄り添いながらお話を伺った。
当社は過去にも取引先の銀行経由でコンサルティングサービスを紹介されたことがあったが、そのような経緯で入るコンサルタントと比べ、中立的な立場にある伴走支援者に対しては、社長としても比較的話しやすいようであった。
「会社のwebサイトをリニューアルしようと考えたが、相談したデザイナーから『webサイトからどういったメッセージを発信したいのか。御社の企業理念のようなものはないか』と言われた。改めて考えると、これまでそうしたものは言語化されてこなかった」
対話の中で、社長からこのような発言があり、経営理念・ビジョンの策定を一つのテーマとして、支援を進めていくこととなった。
「理念を作る以上は、その理念の背景について社長自身が2時間は説明できるくらいでなければいけない」 こうした社長の問題意識から、策定に際しては、社長以下でプロジェクトチームを組成し、支援者側からはフレームワークの提示や会議の運営支援等を通じて、チームの動きをサポートしていった。

【社内の仲立ちも行いながら、社内の合意を後押し】
プロジェクト初期は支援者側で主導しながらも、途中から会議の仕切りをプロジェクトメンバーの中から選定し、少しずつプロジェクトの運営主体をプロジェクトチーム側に委ねていった。
支援の上では、当社が一族経営の企業である点、また、現社長が就任して間もない点に留意した。先代の社長(会長)を始め、社内には現社長より上の世代の方々がいる。そうした方々の当社に対する思いを汲み取りながらも、このビジョンは現社長による「新世代の取組み」として尊重していただく必要があった。このため、支援者側からOB等にヒアリングも行うとともに、また、先代社長に対しても、ビジョンの策定状況については支援者の方から丁寧に共有を行うとともに、ビジョンの必要性や、作成に携わるチームの熱意をしっかりと説明した。
当社として初めての取組ということもあり、約1年間のプロジェクト期間のうち、9カ月が過ぎても殆ど白紙状態といった危機的な状況にも陥ったものの、正月返上でビジョン策定に臨んだプロジェクトメンバーの熱意により、無事ビジョンを策定することができた。会長からも、「会社の皆で作り上げたもの。良いものが出来たと思う」という声を貰うことができた。
ビジョンが策定されたことにより、この発端となった企業webサイトの作成も進み、支援終了後、会社としてのメッセージを盛り込んだサイトリニューアルに至っている。

【マネジメント層の視点を引き上げ、社内コミュニケーションを促進】
ビジョンの策定と並行して、社内のコミュニケーション、特に社長の周囲の役員・マネジメント層の視座の引き上げも課題であることに支援者は気づいた。
「皆さんは担当者ではなく経営陣の一員である。本来であれば社長が暴走していたら止めるのが皆さんの役目だ。自身の担当領域に縮こまるだけでなく、経営全体を俯瞰して見なければいけない」
敢えて強めの言葉も使い、手始めの取組みとして、取締役会を始めとした既存の会議体の改善を提案した。それまで四半期ベースでの開催だった取締役会を毎月の開催とし、規定類や会議資料の見直しを図った。負担もあったが、話す頻度が増えることで「この点も議題に載せたほうが良いのではないか」という気づきも参加者側に生まれた。

伴走支援の効果

本支援の中で、企業理念・ビジョンが言語化され、また、支援終了後にも、webサイトのリニューアルという具体的な成果を得ることができた。
本支援は、伴走支援で会社全体の総点検・経営陣との面談を実施し、「経営理念・ビジョン」の策定という課題と解決の方向性を確認した後、中小機構ハンズオン支援に引き継ぎ、プロジェクトチームの活動を継続的に支援、企業理念・ビジョンの言語化という成果まで結びつけたものである。伴走支援終了後の進捗状況の共有やプロジェクト報告会への参加など、経産局と中小機構の連携が円滑に行われたことも効果的な支援につながった要因といえる。
また、単なるアウトプットだけでなく、ビジョンの策定を通じて、プロジェクトチームメンバーの中に「自分たちでやり切った」という成功体験が生まれたことも成果の一つである。支援終了後も、ビジョンを策定したプロジェクトチームの活動は継続しており、経営戦略の策定や、事業再構築補助金を活用した海外展開といった取組にも派生している。

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