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〜現場リーダー層を巻き込むこみ自信を醸成。経営と現場の融合を実現~

山京インテック株式会社(長野県飯田市 電子機器製造業 従業員数107名 資本金4,840万円)

本支援では、キーパーソンである総務課長を中心として、現場のリーダーである部課長層を巻き込んだ支援をすることでプレイングマネージャーであった管理職のレベルアップを図るとともに、経営と現場リーダー層のコミュニケーションが強化されたことにより経営と現場がうまく融合して、互いに相談し合いながら自立的に取り組める企業へと変革を遂げた事例である。


本事例のポイント

【キーパーソンの見極めと巻き込み】
初回の訪問時に経営視点を持つ総務課長がキーパーソンであることを見極め、キーパーソンを中心に据えて取組を推進したことで、経営層と現場との合意を取りながら進めることができ、支援の成功確度が飛躍的に向上した。また、社長の右腕人材の育成は中小企業にとっては重要な共通課題であるため、キーパーソンを特定できるようにアンテナを張ることは重要な要素と言える。

【社長の意識変革】
人事面における従業員の声や問題意識を伝えたことが、社長の立場で気づきにくい課題に対して角度を変えて知らせる機会となった。丁寧にヒアリング結果を分析し、報告したことで社長が人事面の課題に向き合うきっかけとなった。

当社の背景

当社は1972年の創業以来、オプトメカトロニクスをコア技術として、設計開発・精密機械加工・システム開発・電子機器組立事業を行ってきた企業である。社長は2008年に2代目社長に就任して以降、強いリーダーシップで会社を牽引してきた。リーマンショック以降、仕事量は回復してきたものの収益性の悪化に悩んでおり、利益率の低い下請型ビジネスから、自社製品を開発する自立型への転換を図っていた。民間コンサルへ依頼し事業計画を策定する予定となっていたため、スコープが被らないように留意して課題を設定していく必要があった。

支援の流れ

【キーパーソンの巻き込み】
初回訪問時に伴走支援の趣旨を説明したところ、企業に寄り添って現状を深く理解したうえで自分たちにあったものを一緒に考えてくれるという点が刺さり、支援を受けることを決めていただいた。
まずは現状を把握するために経営層、各部長、総務課長からのヒアリングを行った。初回訪問時にも同席された総務課長が窓口となっていただき、課題の洗い出しを進めていった。総務課長は経営の視点も持っており会社のキーパーソンであることはすぐに分かったため、総務課長を中心に各事業部長を巻き込み課題の洗い出しを行った。
事前に得ていた情報を基に分析を行い、課題に対する仮説をもってヒアリングを行うことで、「部門ごとに見ている指標が異なり、部門間でのコミュニケーションが不足している」、「事業計画は立てているものの、PDCAのCとAが適切に行われておらず計画と行動にずれが出てきている」、「評価基準や方法について悩まれている管理職が多い」等と言った声を拾うことができた。
総点検の結果として課題を幅広く洗い出したうえで、民間コンサルの対応と被らない領域かつ、優先度が高いと考えられる「①事業計画のPDCAを回す仕組み構築」、「②人事制度の構築」に対する支援をおこなうことを総務課長とすりあわせをした後に社長へ提案することとなった。

【(課題へ向き合うきっかけ】
この総点検結果の報告時、人事面の課題について言及した際に、普段ソフトな社長の顔が曇ったことが印象的であった。「給与や評価に不満をもっている者がいる」というような伝わり方になってしまった様子であった。そこで同席された総務課長がヒアリング内容の詳細を説明し、さらに後日支援チームがヒアリング結果の再確認と報告を行うことでご納得いただけた。このことが、社長の立場では認識しにくかった人事面の課題を、角度を変えて伝える機会となり、向き合うきっかけを社長が持つことにつながったと考えている。

【現場リーダー中心による課題解決】
本企業の本質的課題として、「管理職の多くがプレイングマネージャーとして動いている」など管理面に不安を持つ者が多かったことから「部課長クラスのレベルアップ」が必要と考えた。課題解決フェーズでは、総務課長に加え部門横断的に活動できる室長を中心に、現場リーダー層の課長職も巻き込んで取組を進めた。
「①事業計画のPDCAを回す仕組み構築」においては、各部門で事業計画に対するKPIを設定し、進捗を確認する会議体の設置を行った。部門ごとに異なる指標をKPIに設定していたが、指標の定義や管理する指標を部門横断で統一することで、各部門同じ方向を向いて議論することができるようになった。
また、「②人事制度の構築」については、人事目標制度を作る土台として、階級毎の求める人材要件を明確化する取組を行った。課長以上に集まってもらい意見出しを行い、部長以上で集約し社長に報告する形で進行していった。その結果、部門ごとにバラバラであった管理方法・考え方が統一されたことに加え、社長と現場リーダー層のコミュニケーションがより一層強化され、会社一丸となって自己変革を推し進める風土が醸成された。

【現場リーダー層の成長】
取組に参加いただいた部課長以上の現場リーダー層の方々は、依頼した作業についてしっかりと次回打ち合わせまでに対応をしてきてくれたため、スムーズに取組は進行していった。一方で彼らは決してレベルが低くないにも関わらず、「自分たちは大したことない」と自信を持てずにいる様子だった。そのため、「良くできているところは具体的に褒める」「足りないところは明確に指摘をし、次のステップを示す」ということを意識し支援を進めた。特に「自分たちの考えを周りに伝えて議論をする」ということが苦手であったため、会議中に指名して発言をしてもらう、発言の良い点を褒めるということの繰り返すことで自発的な発言も増え、会議の品質が上がっていった。最終的には支援チームのファシリテーションが不要なほど自立的に会議が進行していくようになった。支援終了後に当時のことを社長と振り返った際に、「支援チームが上から目線ではなく、当社の目線に降りてきてくれて課題に向き合ってくれたことが非常に大きい」というコメントをいただくことができた。現場リーダー層とひざ詰めで支援していたことが功を奏し、経営層、現場ともに信頼を勝ち取ることができたものと考えている。

伴走支援の効果

伴走支援を通して現場リーダー層のレベルが飛躍的に成長したことや、社長と現場リーダー層のコミュニケーションが強化され、相互に相談をしながら進められるようになったことで、経営と現場がうまく融合し自立的に取り組みを推し進める企業へと変革を遂げた。
また、伴走支援での取組も継続して対応されており、人事制度について目標シートの運用と定期的な面談を設定することで人材育成をフォローしていく仕組みを自立的に構築するに至った。
更に、PDCAサイクルが強化されたことにより、事業計画で掲げた脱下請けに向けて、長年の取引先との取引見直しや、新事業として立ち上げた自社商品の顧客開拓の成功など事業ポートフォリオの変革にも自立的に挑戦し成果を残している。

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