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〜部門間の壁を越え、本質的課題を追求する経営会議体の構築〜

有限会社一福 (島根県飯石郡 食品製造・飲食業 従業員数60名、資本金8百万円)

社長や経営幹部陣は、自社に対する漠然とした経営課題をそれぞれ持ちつつも、それらが言語化され共有されていないこと、経営課題を解決し、さらなる成長に向けた具体的施策立案へと検討を深堀りするための土台作りに課題を抱えていた。支援開始と同時期に新たに立ち上げられた月一回の経営会議を基軸に、社長及び経営幹部等の主要メンバーが忌憚のない生産的な議論を展開できるよう、支援者が会議に入り込んでサポート。その結果、支援前後における経営会議の内容および生産性が格段に向上、具体的な経営課題の特定および解決施策の立案、実行までを自走的に実施・管理できる会議体へと変わっていくきっかけを作った。


本事例のポイント

【経営者および現場社員との接し方】
社長、現場社員へのヒアリングや対話をする中で、支援者目線からはすぐに当社の課題について複数個あたりをつけることができた。ただ、すぐにそれらの課題を指摘することはしなかった。本支援の趣旨と照らし、課題は企業側に気づいてもらいたいからという理由もあるが、日々全力で事業を運営し、色々と試行錯誤しながらも邁進している社長や現場社員に、第三者が急に課題をひたすら投げかけていくのはリスペクトに欠けると考えている。彼らの話から仮説的な課題設定をする努力は支援者として惜しまず、一方で社長等の話を傾聴し、彼らが課題に気づくようサポート、また彼らと一緒に課題解決を模索しようとする姿勢は企業と向き合う上では極めて重要といえる。

【伴走支援者としての心構え】
当支援期間中、支援者として最高品質の支援を企業側に提供することを常に意識していることと併せて、常に“楽しむ”こと、またそれを表現することを意識している。本支援に限らず、企業が自社の課題と向き合う場面では往々にして後ろ向きな、どんよりとした雰囲気になりやすい。ただ、課題解決は本来ネガティブなものではなく、今よりも成長するためのポジティブな活動であり、それを支援者自らが“楽しむ”こと、またそれを表現・体現することで企業側もポジティブになれるのではないかと考えている。当社支援においても常に楽しんで業務を遂行し、以前社長から「楽しんでいることが伝わってくる、また来てほしいと思える支援者」というお言葉をいただいた。

当社の背景

当社は大正11年創業の老舗事業者であり、現社長は4代目。県内本店を起点に、広島に直営店を展開、主力商品である出雲そばを提供している。近年EC販売も手掛け、EC売上拡大に注力している。現在は、足元の経営基盤強化しつつ、EC拡大や新店舗展開による事業規模拡大を志向している。一方で、多岐にわたり、細分化されている当社の事業に共通する方向性や全社的な事業計画に類するものが存在していなかった。

支援の流れ

【各人が漠然と感じていた「課題の言語化」「全社的な共通認識化」がさらなる成長に向けた鍵】
支援開始以降、今まで把握していた以上の情報を把握すべく、各種データ提供依頼、社長および経営幹部層の社員に対するヒアリングを行った。特にヒアリングにて気づいた点として、社長および幹部陣はそれぞれ課題意識を持たれており、それらは当社からいただいた各種データや支援開始前から把握していた情報から得られた仮説の課題に相当するものであった。一方、それらの課題意識は漠然としており、社長および幹部層間で言語化され共有されていないがゆえに、全社的な方向性が定まらずにいた。この段で、本支援を通じて当社に提供すべき価値とは、現状漠然としている課題意識の具体化・言語化を支援すること、またそれを踏まえ社長および経営幹部で認識を共有し、全社的な方向性を見出す支援をすることにあると理解した。以降、まずはいただいたデータやヒアリングにより仕入れた情報は、可能な限り整理のうえアウトプットとして提示することを心掛け、漠然とした課題意識について言語化していく議論の材料として準備した。
また社長からは次のような課題意識も共有いただいていた。
「社員とは売上10億円達成という目標は共有できているものの、そこに対する社員各人の考えや思い、方向性(ベクトル)が合っていないと感じている。」
上記課題意識を検証・具体化するにあたっては現在当社が有しているデータからは難しい。そこで社長や幹部陣とも話し合い、社員に対するアンケートを実施することとなった。アンケートでは社員各人が抱える当社に対する課題意識や、その解決策等忌憚ない意見を聞き出せるよう設計した。その結果、社長が想定していた通り社員各人の思い描く当社の方向性(ベクトル)がバラバラであり、特には中間管理層の意思統一を図る必要性がある点は、課題として顕在化した例である。一方、業務に対し各人がやりがいを持ってくれている点は嬉しい気づきであったとおっしゃってくださった。漠然とした課題意識を検証のうえ言語化することの重要さ、またその手法、および結果から得られる新たな気づきの可能性を本アンケートでお伝えすることができたのではないかと思っている。

【当事者・同志として当社と向き合い、一経営幹部という姿勢で参画する】
当社では、本支援開始時から、社長、幹部陣および各部門担当者による全6名の経営会議を毎月開催していた。既存データやヒアリング、またアンケートにより新たに取得したデータから見える当社課題について、社長だけでなく幹部陣とも議論したいと考え、この経営会議に途中から参加させていただけないか打診し、快諾いただいた。経営会議に参加する以上は、生半可な気持ちではなく、会議メンバーと同じ目線で議論し、一経営幹部として振る舞うよう心掛けた。とはいえ自分のことを知らないメンバーもいたので、変にでしゃばることはせず、まずはメンバーの信頼を獲得するよう意識した。
この経営会議は、メンバー間で当社、あるいは自部門に対する課題意識を共有し、全体で議論のうえ解決策や全社的な方向性を話し合うことを目的としていた。初めて参加した回から、かなり活発な議論が交わされており、その熱量に驚かされた。まずはメンバーの発言や議論の行方を傾聴することに集中した。その中での気づきとして、大きくは次の2点を感じた。
① 各人がその場の空気を読み、本音で発信できていないのではないか(実は自分は発言者と違う課題意識を持っているが、言うのをやめておこう等)
② 議題が非連続的であり、深堀りが不十分なのではないか(〇〇さんの意見を聞いたらそれを深堀り・具体化せず、次は△△さんの意見を聞く等)
特に①が各人の課題意識を言語化し、共有することへの障壁になっていると考えた。違う意見があれば積極的に発信することで、異なる意見に対する議論が生まれ、いずれ集約し、その場にいるメンバー間で共通認識化される。認識されたものについて、さらに議論を深堀りし、実際の活動を具体化していくことが重要であり、それを本経営会議メンバーに理解してもらいたいと考えた。この点について、外部支援者の立場から経営会議運営上の課題として提示するのではなく、会議に出席する一経営幹部として、これまでとは違う角度からの意見・課題意識を言う、あるいは一つの課題に対し深掘るような発言(「その課題に対しては次何をすれば解決に向かいますかね?」など)をすることで、会議の方向性の修正や新たな議題の提示を実施した。その結果、回を重ねるごとに反対意見も含め意見が飛び交うようになり、より活発な、そしてより生産的な会議へとなっていった。

【刺激された主体性、手に入れた論理性が経営会議をより生産的な場へと変えた】
経営会議では、回を重ねるごとに活発に意見交換がされ、収束し、具体化していくという生産的な場へと進化していった。支援者は、議論をよりよいものへと昇華していく際に不足している知見を必要に応じて提供していくこととした。社長からは「従前までは各部門の独立性が高く、自部門以外に対する関心が非常に低かったところ、経営会議を通じて他部門の課題に対しても自分ごとのように頭を使うようになり、部門間のシナジーも生まれ始めた」とのコメントをいただいた。
部門間の隔てが少しずつ解消し、全社的に一つの方向に向かって活発な意見交換や解決を模索する議論を実施する場を作り上げられたのは、当社の今後の成長のためには非常に有効だったと考えている。
現在経営会議では、人事制度の見直し、労務管理の高度化、EC売上の強化などが活発に議論されている。また、各テーマについて、PDCAの観点からの検討項目、実施項目が宿題として明示化され、実行されるよう仕組みができつつあり、PDCAサイクルも徐々に回り始めている。

伴走支援の効果

伴走支援を通じて、生産的で高度な経営会議が作り上げられることとなった。部門間の垣根を超えた議論が活発に行われ、PDCAサイクルにより施策を実現していく仕組みが整いはじめた。本会議運営を通じて、人事制度の見直し、労務管理の高度化、EC売上の強化などの議論が進んでおり、企業としての自走化の動きとなっている。

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