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〜現場主体で生まれ、具体化される組織変革の可能性〜

有限会社 小川商店(島根県大田市 小売・サービス・不動産業 売上約15億円)

M&Aにより事業拡大をしてきた当社は、各部門が優れた人材を抱え、優れた技術力・手法で多方面に事業展開しているがゆえ、「部門間連携」が十分に取れていない課題に悩まれていた。支援では、部門横断的に実施した協議やワークショップを通じ、組織変革およびさらなる成長に向け必要となる組織横断的な相乗効果の創出について現場主体で議論した。元々強い思いを持つ人材が集まっていることから、議論は活発に行われ、支援者としてはそれらを整理し、本質的かつ合理的な議論が実現できるようファシリテーションを行った。実際の具体的成果が現れるまでにはもう少し時間を要するものの、現状でも、現場主体かつ組織横断的な取組が見られるようになり、着実に組織変革の軌道に乗ってきている。


本事例のポイント

【現場からのアイデア創出を促し応援する姿勢】
当社が優れている点は、社長だけでなく多くの現場社員も自社事業ひいては地域全体の活性化に対する熱い思いを持っていることである。支援者は、あくまで黒子としてのファシリテーション、課題整理などを行い、実現した将来のイメージを醸成しつつ、各社員にそれぞれの思いを語っていただき、それを具現化していくためのアイデア創出を促した。

当社の背景

当社は創業1688年と長い歴史のある企業であり、現社長は12代目。石油製品販売に始まり、M&Aや事業承継により、地域の幅広い顧客のニーズに応えられるよう多岐にわたる事業を展開している。今後も積極的な事業拡大を志向する中、足もとの事業体制の最適化、組織風土改革、組織間の相乗効果創出(シナジー最大化)への取組の必要性を感じ始めている。

支援の流れ

【自社事業に留まらない、地域に対する社長の強い思いや行動力】
社長は自社事業に留まらず地域活性化に強い思いを持っており、より深く当社の将来や課題意識をお伺いしていく中で、今後さらに当社が成長し活躍していく可能性を実感した。元々外部の意見を積極的に吸収し、自らの考えに反映させていくマインドを社長は持っていたため、本支援のような外部支援に対して特段の抵抗感を示されず、序盤から深く本質的な議論を展開することができた。  
ただ支援者としてプレッシャーを感じた点は、社長は単純に思いばかりが先行しているわけではなく、自身で事業承継や人口統計学等の具体的テーマや専門知識を取り入れられていること、また社会構造の変化やその中での中小企業経営の在り方を日々考えられている方だったため、どのように支援者としてバリューを出せばいいかという点だった。

【小川商店は事業・地域成長に対し強い思いを持つ人材の集合体】
支援開始後、社長と数回にわたり意見交換・協議させていただいたのち、現場の社員にもインタビューを実施。そこでまず驚いたのは、自社(自部門)の事業に対する強い思いを持っているのは社長だけでなく、マネージャーおよび現場社員も同等に熱く強い思いを持っていることだった。熱く強い思いを持つ人材の集合体ともいえる当社は、時に部門間、マネージャー感がぶつかってしまう場面、またそれが当社の成長・効率化の障壁となっている現状が想定でき、社長自身も認識されている様子であった。当社はM&Aを積極的に進めてきたことを背景に、一つの企業体でありながら多種多様な組織文化が混在する企業である。それぞれ技術力(競争力)の源泉や業務プロセスが違い、それぞれが非常に優れているがゆえになかなか交わらない。これらを組織として交わらせ相乗効果を創出する術はないのか、という点に社長も考えを巡らされていた。
そこで、当社が組織一丸となって向かうべき方向性に対し皆でアイデアを出し合い、課題を解決し、次なる成長力の起爆剤となるような組織風土醸成を達成するために、社長、マネージャー、現場社員それぞれの思いを解釈のうえ整理し前進させるサポートを外部支援機関として提供することが本支援のバリューであると考えた。

【再認識した現場の積極性、現場主体であふれ出し具体化されていく変革アイデア】
組織や風土づくりをテーマとして、現場社員によるワークショップを数回にわたり開催した。その中で課題意識や意見・アイデアの出し合いを行った。開催してみると各人が組織のあるべき姿に対する考えを極めて具体的に持っていることを知った。ワークショップ開催前、「社員が話すことなんて10分もないですよ」という声もあったが、実際に開催してみると、予定していた90分間みっちり議論が交わされ、改めて現場の思いの強さ、積極的な姿勢に驚かされた。元々外部機関に対する抵抗感は現場にもないと聞いてはいたが、実際のワークショップでも抵抗感は見られなかった。
支援者として、彼らが最大限意見を出し合う活発な議論の場とするため最大限工夫(表情、話し方、発言内容など)した。最終ゴールとしてお客様に喜んでいただくことを全社的な目標に据え、例えば現在混在する各種作業手順の統一、部門間コミュニケーションの促進、他部門が抱える課題を組織横断的に考える必要性などの課題意識が現場社員からどんどん出てきた。当初このワークショップを上手くファシリテーションしないと、「シーン…」とした雰囲気になってしまうことを危惧していたが、それは杞憂であり、むしろ可能な限り議論が発散しないよう彼らの発言を都度整理し、本質的な議題を提起、解決策を検討するためのファシリテーションに徹することとした。その結果、実際に作業手順を文書化し展開すること、ビデオツールの活用を促し部門間のコミュニケーションを促進することなど、具体的な方向性もワークショップで出てきた。
このワークショップの良かったところは、単に課題の洗い出しやその解決方法の検討に留まらず、実際に解決したい、しなくてはいけないというマインドが議論の中で醸成されていった点にあると思っている。なぜそのようなマインドが醸成されたのかについては、常に議論が前向きな視線で行われていたからなのではないかと考える。特に課題について議論している場合、「これもよくないところだよね」、「あれも今思えば失敗だったよね」というように後ろ向きな視線で検討される傾向にある。一方当社で行ったワークショップでは、「ここがもっとこうなればよくなるのでは?」、「これをやれば今までにない取組になりそう!」など、前向きな視線で議論が展開されていたからこそだと感じている。

伴走支援の効果

支援終了後においても、当社では部門間を超えた取組が少しずつ増えてきている。それも現場主体での動きが目立つようになってきており、これは組織横断的な取組(相乗効果創出)を尊重する組織風土の醸成、現場が主体的に動くマインドの醸成をテーマに据えた本支援による効果であると考える。
社長からは、「元々外部支援機関に対する抵抗はなかったものの、思い返せば自社の弱みを外部にさらけ出すことへの抵抗感も従前はあったように思う。本支援の過程および実際に現れ始めている効果を目の当たりにし、その抵抗感も薄れた。これからも支援を続けてほしい。」との言葉をいただいた。
当社は今後も現場からの主体性を追い風に、さらなる組織変革、その先の成長を実現されると強く感じることができた。

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