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~経営層と現場との認識ギャップを埋め共に重点課題に取り組む~
沖縄県読谷村 菓子製造販売業 従業員数338名 資本金4,500万円
当社は労働生産性向上のためのモデル実証企業として支援者が総合診断を実施し、従前から一定程度の信頼を得ていた。伴走型支援へ引き継ぐに当たっては経営層との距離感や面談回数がこれまでと大きく異なり、また、従前は触れてこなかった組織問題などのセンシティブな内容にも踏み込むことから更なる信頼関係を構築していく必要があった。そうした中、伴走支援の目的である「対話と傾聴」を経営層と繰り返し行い、信頼関係を強化することで経営層と現場との課題認識の共有を実現。経営層と現場が同じ問題意識をもって課題解決に取り組む、能動的な行動(自走化)へ導いた。
本事例のポイント
【経営層と現場との課題に係るすり合わせ】
当社は中期経営計画策定や人事制度見直し、システムの基幹設計、5S活動などいろいろな取組を行ってきた。しかし、これらが充分な結果となっていないことが経営層との面談の中でわかった。次から次へと出てくる課題に対し、「どう対処すべきかわからない」「各現場の責任者で解決してほしい」というのが経営層の悩みだった。多岐に渡る課題を経営層自らが納得感を持って解決に導くためには、企業が自主的に課題を設定することが重要と考え、経営層を含めた経営幹部による戦略立案ワークショップの実施の提案をした。
【課題解決に向けたプロセス方法の醸成】
戦略立案ワークショップについては、①「現状認識」②「経営課題の抽出」③「経営戦略の検討」④「経営課題の解決策」⑤「実行計画立案・開始」の流れで実施。経営層と検討メンバー及び現場の従業員から、経営目標に向けてやらなければならないことを網羅的に検討するための材料(情報)を収集・分析し共有した。
そこで浮き彫りになってきたのが、「原材料不足に対する問題」「人手不足による生産体制への影響と従業員のオペレーションの負荷加重」「お客様へのサービスの低下」「人事考課に対する不満」「個人の価値観の違いによる不安」などだった。経営目標を達成するため、検討メンバーが中心となって議論し、検討しながら課題の体系図を整理し完成させていった。
当社の背景
当社は「紅いもタルト」を主力商品とし、地元の素材にこだわった菓子の製造販売を展開している。観光土産品販売における沖縄県内の有力企業であり、近年では恐竜パークをオープンするなど観光客を中心に安定した経営基盤を構築してきた。しかし、コロナ禍の影響で売上が激減。従業員の離職による深刻な人手不足にも陥っており、新商品開発やECサイト強化による売上拡大を目指している。
支援の流れ
【経営層と現場との認識ギャップを埋める】
戦略立案ワークショップを経て検討メンバーが最終的に整理した課題は、おおむね当初の経営層からの要望であった重点課題を網羅しているものになった。深刻な人手不足・原料不足問題に向き合う中、支援者は常に経営層の困りごとに寄り添うように伴走することで徐々に経営層との距離が縮まり、率直な意見交換ができるようになっていった。厳しい経営状況の中、経営層から「従業員を大切にしていくことが重要」との発言もあり、賃金のベースアップを見直し今期はボーナスの支給も決定した。
【全従業員へのアンケートをもとに企業内部を可視化】
支援者は従業員の意識調査を行い、調査報告を含め定期的な経営層との対話を続けた。調査の結果、企業内部の可視化が経営層に充分されておらず、経営層と現場のギャップを埋めるためにはネガティブ意見を持つ社員に対してのフォローをどう対応していくかが課題ということがわかった。また、人手不足に対する現場の意見では、現場責任者から「募集しても人員が集まらず今いるメンバーで何とかしなければならない」との発言があり、各現場を視察したところ、現場責任者もプレイイングマネージャーになっており現状のオペレーションの見直しなどやっている余裕がない状況が浮き彫りになった。
他にも、外国人労働者の紹介や人手不足による店舗影響度の実態調査、原材料農家や農業試験センターへの聞取調査を実施。今後の取組方を丁寧に確認しながらワークショップが継続して円滑に進められるようにサポートし、原材料の供給については新たな方向性に向けて動き始めている。
【会長の想いが詰まった経営理念はそのままに自走化を促進】
支援開始当初、実質的な経営判断については創業者である会長の意向が強い状況があるとの議論もあり、その点については支援チーム内で慎重に検討しながら支援を進めてきた。現場の状況を可視化することなどに注力した結果、徐々に経営層の意識の変化と自走化の動きがみられるようになった。
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