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~次代経営陣によるマネジメント体制構築~

株式会社ヤマガタ(茨城県日立市 運輸業 従業員数878名 資本金1億円)

当社は運送業であるがその事業領域は幅広く、直面している課題も多岐にわたっていた。そこで、社長および後継者と目される幹部3名への初期インタビューに十分な時間をかけ、当社が認識している問題意識について丁寧に確認。経営体制、人事、経理、総務、ITなど全社マネジメントに係る課題に加え、約40ある営業所やグループ会社6社の抱える問題点を網羅的に理解することに努めた。支援チームがこのような姿勢で臨んだことで、当社も本支援を「組織が変わる機会」と捉え、体制構築に向けて積極的に取り組んだ。


本事例のポイント

【自走化に繋がる意識変革】

丁寧な対話を繰り返し、検討用資料を工夫して提供するなどにより課題設定・課題解決の議論を深めた。その結果、支援期間中に意識変革が見られ、後半は当社が主体的に課題解決に取り組むようになり、支援期間終了後の自走化に繋がった。

【次代経営陣の経営参加】

高齢の社長に意思決定を依存していたが、「経営理念」「行動指針」「中長期ビジョン」「中期経営計画」の策定を通じて、次代の経営陣である常務と取締役が実質的に意思決定の一部を担う体制が確立。将来の事業承継の準備が進捗することになった。

当社の背景

当社は茨城県日立市に本社を構え、北海道から九州まで全国に物流拠点網を有する。物流会社としてトラック運送を中心に、輸出入サービスや物流センターの運営なども行っており、M&A等によりグループ会社を数社保有している。

当社の事業を拡大させてきた現社長はカリスマ性があり、80歳代となった現在も社内の意思決定を行っている。このため組織として社長に依存する体制が根強く、次世代の経営者に権限移譲が進んでいない状況であった。設立から60年、堅調に成長を遂げて規模を拡大してきたが、現場では決まったことがなかなか周知徹底されない事態に陥り、近年は成長の踊り場に差し掛かっていた。

支援の流れ

【企業の問題意識に対する傾聴と現状の可視化】

ヒアリングの結果、当社の課題認識が広範に及んでいたため、会社全体の成長に繋がる課題が見えにくくなっていることがわかった。そこで、支援チームは幹部へのインタビューや提出された参考資料を基に、直面している課題に共通する組織の根っこの課題に当社が気づくためのサポートを実施。具体的には、「課題のグルーピング」「沿革と業績推移の関係図」「グループ相関図」「SWOT分析」「社是から通常業務までの関連を示すピラミッド図」などの資料を作成し、当社の現状を見える化することで課題設定における議論を深めていくことができた。

【企業と支援チームの課題認識が一致するまで繰り返し対話】

沿革と業績推移の関係図から新たな成長への踊り場に来ていることに気づいてもらい、現状の可視化によって当社の成長を阻害している要因としてマネジメント体制の不備があると考えるに至った。そこで、「中長期的な経営方針の明確化」「経営方針の現場への周知・徹底」「次代を担う経営陣のマネジメント力の向上」の3つを図り、経営基盤を強化することを決定。抱えている諸課題を解決に導くために経営基盤の強化は不可欠であり、それを実現するために「経営理念」「行動指針」「中長期ビジョン」「中期経営計画」の策定に取り組む社内プロジェクトを立ち上げることにした。

【自走化への意識変革】

社内プロジェクトのメンバーは社長を除く幹部で構成。社長の意思決定への参加を明確にするためプロジェクトを3つのフェーズに分け、各フェーズ終了時に社長の承認を得て進めることにした。社長が直接的に関与しないマネジメントの取組は当社初の試みであった。

第1フェーズ「経営理念」「行動指針」「中長期ビジョン」の策定では、プロジェクトメンバーに戸惑いが見られ、支援チームとの議論も様子見の感じが強かった。そこで、支援チームのコンサルタント2名、関東経済産業局局員2名、日立市職員1名の全員も個々に案を出して議論の活発化を図り、プロジェクトメンバーからの前向きな意見を引き出していった。

第2フェーズ「中期経営計画」の策定に入ると、当社幹部が主体的に取り組む姿勢が格段に向上。積極的に自身の考えを発言するようになり、実現可能性が高いと考えられる中期経営計画がプロジェクトメンバー主導で策定され、社長も納得の内容で全面承認が得られた。

第3フェーズ「単年度事業計画策定」と「経営管理運営体制の構築」では、支援チームの関与を減らし自主性を重視。プロジェクトの成果を社内に公表する全社会議では、会議冒頭で社長が変革の意思を示し、プロジェクトリーダーの常務と取締役がその内容を説明した。その後も経営理念の社内周知や中期経営計画の単年度事業計画への落とし込み、管理運営体制の構築を円滑に進めることができ、伴走支援を活用した本プロジェクトは完了した。

伴走支援の効果

課題設定からプロジェクトの第1フェーズまでは支援チームが資料作成や議論の進行を主導していたが、支援を進めるに連れて当社の主体性が高まっていった。支援後半には当社主体でプロジェクトが進行するようになり、支援チームは側面からの確認・助言に留めた。

伴走支援終了後も、経営理念・行動指針・中長期ビジョンの社内周知活動の継続、中期経営計画に基づくPDCA運営が確認でき、企業の成長を志向する経営基盤が確立された。売上、利益等の業績面でも、中期経営計画のゴールに向けて着実に進捗している。

当社の支援開始後にコロナ禍となり、支援開始の直近期(20年3月期)に対して、2期間は業績が低迷したが、23年3月期の売上は前期比+5%、営業利益は前期比+342%と回復傾向にあり、これらは中期計画のゴールである25年3月期の計画をほぼ達成する水準である。当社は業績に満足することなく、各種管理指標に関わるPDCAを回すことなど経営基盤の更なる強化に向けて走り続けている。

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