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~豪雨災害からの再生に向けて、道の駅リニューアルの伴走支援~

津山木工芸品事業協同組合(宮城県登米市 製造業 従業員数10名 資本金290万円)

面積の8割を森林が占める登米市津山町では、1982年に地元の「津山杉」を集成加工した「杉矢羽(すぎやばね)集成材」が開発され、地域の木工技術者によって津山木工芸品事業協同組合が設立された。同年、組合の流通拠点「クラフトショップもくもくハウス」がオープン。2005年には、もくもくハウスを核とする「道の駅津山もくもくランド」が誕生した。しかし、2019年の東日本台風(台風第19号)による豪雨災害で施設が大きな被害を受け、店舗や道の駅としての機能を喪失。道の駅の再生に向けて、宮城県中小企業団体中央会と東北工業大学が連携し伴走支援を行った。


本事例のポイント

【地元大学と連携した伴走支援】

宮城県中小企業団体中央会では、産官学連携を推進する東北工業大学と2016年に包括連携協定を締結。中央会が行う調査やセミナーなどへの教員・学生の派遣や、中央会の会員に対する経営革新、技術開発に関する支援等の内容で協定を結んでいる。津山木工芸品事業協同組合から中央会に相談があり、これを受けて東北工業大学に協力を要請。2022年10月から同大学との連携による伴走支援がスタートした。

【業務拡張に伴う新たな経営計画の策定】

リニューアル後の道の駅では、地域住民にも日常的に利用してもらうために取り扱い品目を増やす等の事業拡張が決定した。これに伴い経営計画を策定し、売上等の数値目標を設定。目標達成に向けて、地域のニーズに合わせた取り扱い品目を厳選するなど、オープン前に議論を重ねることで支援の効果を発揮することができた。

当社の背景

「道の駅津山もくもくランド」は、仙台市や石巻市から南三陸町、気仙沼市等へ向かう間の休憩場所として賑わい、オープン当初から運営が順調だった。東日本大震災では自主的に観光地からの帰宅困難者や地元被災者を受入れ、南三陸町や気仙沼市等の被災地に入る最終の道の駅でもあったことから自衛隊や海外からの救助隊、各県からの警察やレスキュー隊、報道機関の拠点にもなった。

一方、震災後は観光客が途絶え、特に震災直後の3月、4月は大幅に売上が減少。このまま経営を続けていけるのか真剣に悩んだ時期もあったが、5月頃からはボランティアが被災地に入るために全国からこの道の駅を利用するようになり、売上が回復した。また、これまで取引のなかった大手企業から、組合の木工芸品をキャンペーン商品に起用するといった注文も増え、多方面からの支援を受けることができた。新たな繋がりができたことで商品作りのノウハウや技術、ネットワークを発揮できる場面も増加。そうした中、東日本台風で組合店舗を含む道の駅施設は床上80cmまで浸水し、約3年もの間仮店舗での営業を余儀なくされた。2022年12月には登米市が所有する建物の修繕やかさ上げ工事が完了する目途が立ち、2023年1月のリニューアルオープンに向けて準備が進行中であったが、リニューアル後の経営計画や店舗レイアウト等の立案に苦慮していた。

支援の流れ

【大学の知見を活用するとともに、事業者側の意見を傾聴】

今回の支援では、東北工業大学ライフデザイン学部と連携し、大学の知見を活用することとなった。ただし、一方的に提案するだけでなく、事業者側の意見を細かく聴取し、一緒に考えることで気付きを促した。リニューアル後の道の駅では、従来他の団体が担ってきた農産物を中心とした産直品の販売や施設の指定管理者としての業務を引き継ぐ形で新たに取り組む計画もあり、実際の店舗での現場確認を積極的に取り入れることで課題の解決を図った。

【店側とお客様側の両方の視点で店舗レイアウトを検討】

当組合は従来、木工芸品の販売が主であり、農産物を中心とした産直品や地域住民のための日用品の販売、指定管理者としての道の駅の運営全般を担うことは初めての取組であった。加えて、品揃えや利用客が多様化することにより、被災前の店舗運営やレイアウトとは異なる新たなノウハウも必要であった。

新店舗では売場の一体感を重視し、レジの統一化や店舗内動線の検討を行った。店舗内の什器や展示する木工芸品等の寸法をあらかじめ詳細に測定し、商品陳列の組み合わせも何度もシュミレーションした。店舗全体を見渡せるレジカウンターの位置、バックヤードからの品出し、お客様が使用するカートに必要な通路幅、電気コンセントや突起物の位置を事業者側と一緒に確認。店側とお客様側の両面から利便性を考慮し、店舗レイアウトの検討を行った。

【新たな取扱品を加え、売上の一元管理のためにPOSレジを導入】

運営全般についてはノウハウを得るために、これまで産直品の販売を行っていた団体、指定管理者となっていた団体からそれぞれ細かな聞き取りを行った。また、観光客だけでなく高齢化が進む地域住民の利用にも考慮し、従来取り扱っていなかった加工食品や日用品等も販売することを決定。売上等の数値目標を設定するとともに、売上の一元管理を行うためにPOSレジを導入することとした。

指定管理者の受託については、2023年4月からの契約を目指し、委託元である登米市に対し訴求できる管理体制の整備についても事業者側と一緒に検討を行った。

伴走支援の効果

道の駅は当初の予定どおり、2023年1月2日にリニューアルオープンを果たした。同年1月~7月の入場者数は、目標8万8,000人(前年同期比約20%増)に対し、9万5,000人と目標を大きく上回り、売上も目標3,650万円(前年比約20%増)に対し、3,900万円と好成績を上げることができた。

新店舗はこれまでどおり当組合の木工芸品を中心としつつ、登米市内や近隣の南三陸町、石巻市などの加工食品や日用品等も取り扱い品揃えが充実したことで、観光客のみならず地元住民のための暮らしの拠点及び登米市のシンボル的な存在にもなっている。また、2023年4月からは登米市の指定管理者として、道の駅の運営管理も受託することができた。

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