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~防火施工管理ラベル・防炎ラベルの申請発給業務のデジタル化支援~

神奈川県室内装飾事業協同組合(神奈川県横浜市 建設業 従業員数2名 資本金541万円)

防火施工管理ラベルと防炎ラベルは建物内装の防火施工に欠かせないものだが、これまで事業者は紙の書類を郵送して申請を行っていた。ラベルの発給業務を担う神奈川県室内装飾事業協同組合(以下、神装協)は、事業者の負担を減らすために申請のデジタル化を計画。神奈川県中小企業団体中央会(以下、神奈川県中央会)の支援チームは初期相談から電子申請システムの本格稼働まで一貫した伴走支援を実施し、神奈川県、東京都、三多摩、埼玉県、群馬県の関東圏の5つの室内装飾事業協同組合が参加した、全国初となるラベル申請のデジタル化を実現した。


本事例のポイント

【デモ環境の提供によりデジタル化後のイメージを共有】

課題解決のためのツールについて、ベースとなるクラウドサービスにはサイボウズ株式会社の「kintone」を選定した。神奈川県中央会では、以前から会員組合等の顧客名簿や支援実績の管理等についてkintoneを利用しており、導入やシステム構築について一定のノウハウがあった。そのノウハウを活かし、まずは神奈川県中央会が神装協用のデモ環境を構築。防火施工管理ラベル申請のためのアプリケーションを試作、提供することで、デジタル化後のイメージを神装協と組合員との双方で事前に共有できた。また、このデモは実際にシステムを開発するITベンダーとイメージ共有する上でも非常に有効だった。

【システム開発時におけるITベンダーとの橋渡し】

一般的に企業がシステム構築を行う際に直面する課題は、ITベンダーなどの委託業者先に対し、的確にオーダーすることが難しい点が挙げられる。この時点で躓いてしまうと、オーバースペックなシステムや多大なコスト発生の要因になり、企業にとって大きな負担となる。またITベンダーにとっても、顧客がITシステムをもって実現したいことや顧客の業務内容を正確に把握しなければ、要望に叶ったシステムを構築することはできない。本支援においても同様で、ITベンダーとの打合せの際は、神奈川県中央会が内容を整理しながら補足説明等の橋渡しを行い、神装協に対してはITベンダーからの情報や説明を分かりやすく補足した。その結果、神装協、ITベンダー共に十分に理解がなされ、円滑かつスピーディーなシステム構築を実現することができた。

当社の背景

神装協は、神奈川県内の内装工事事業者及びインテリア商品販売業者により構成されている。室内装飾事業においては、火災から人命を守ることも大事な役割の一つであり、組合員は国が定める適切な施工やインテリア商品の証として防火施工管理ラベルと防炎ラベルの表示を行っている。神装協ではこれら2つのラベルの発給業務を行っているが、従来手書きの申請書類を郵送してもらっているため、組合員の負担になっていた。特に防火施工管理ラベルの申請については、壁紙品質検索サイトで商品番号から認定番号を確認して転記する必要があることなどから、組合員の大きな手間と時間を要していた。

支援の流れ

【ITベンダーの選定支援と助成金の申請支援】

今回の電子申請システムでは、神装協の上部団体である日本室内装飾事業協同組合連合会(以下、日装連)に対して、予め定められた帳票様式にラベル申請内容を出力しなければならない。このため、コストと性能を考慮し、帳票出力機能について開発実績のあるITベンダーを選定した。
また、本支援においては「働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)」を活用することとし、助成金の交付申請書作成の支援だけではなく、申請に必要な書類の確認、神奈川労働局との連絡調整などの全般的な支援を行い、2023年3月に支給決定された。

【デファクト・スタンダード化のためのPR支援】

本支援では、業務プロセスのシステム化の他にもう一つのミッションとして、システム自体のデファクト・スタンダード化を目標として掲げた。今回構築したシステムは、利用者が多いほど運用コストを低減することができ、かつ長期的な運用のためには本システム自体を業界の標準にすることが不可欠となる。そこで神奈川県中央会ではPR支援を行った。具体的には、本システムが本格運用する前に新聞社等の各報道機関にプレスリリースを配信。その結果、2022年10月27日付の神奈川新聞に掲載され広くPRすることができた。他にも神装協の専務理事に関連団体での告知を依頼し、会合の際にPRを行って業界紙の取材を受けるなど業界内においても話題となった。

【連携体の構築支援(ルール決め、各種規約類の整備)】

本支援の大きなポイントは、関東圏の5つの室内装飾事業協同組合によるラベルネットワークを構築し、連携体で取り組んだことである。連携体で取り組み、デファクト・スタンダードにすることは、コスト低減において大きな利点となるが、その一方、組合員番号の体系などラベル発給についてのルールが各組合で異なるため、システムを構築するにあたりルールの統一もしくは擦り合わせを行う必要があった。連携体で取り組むことの難しさに直面したが、神装協の専務理事と神奈川県中央会が旗を振り、綿密に5組合合同の打合せを行いルールの統一化を図った。また、ラベルネットワークにおけるシステムの運用費用の徴収方法やメンバー加入・脱退時の対応など、具体的な運用について各種規約類の整備を行った。

伴走支援の効果

本支援の実施により、防火施工管理ラベル・防炎ラベルの申請発給業務のデジタル化が図られ、組合員、神装協共に大きな成果を得ることができた。組合員にとっては、従来事務所に帰着してから申請を行うため残業が発生し負担となっていたが、施工現場でスマートフォンを利用した即時申請が可能となり、労働時間やラベル発給時間が短縮されコスト低減に寄与した。神装協にとっては、日装連への報告について、従来、ラベル発給に関する報告集計を手計算にて行っていたが、集計の自動化により時間短縮が図られた。また、発給履歴のデータ検索が簡便になり、消防署等からの照会依頼に対し容易に対応できるようになった。さらに、災害などの緊急事態時においても他県との連携によりラベル発給業務の代替が可能となったことも大きい。なお、防火施工管理ラベル、防炎ラベル共に電子申請の割合は神奈川県において99%となっており(2023年9月現在)、申請発給業務の完全デジタル化が実現した。

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