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著者: 浦辺貴広

~ちゃんぽんの名店が回転率アップを目指して挑んだDX化~

株式会社四季(鳥取県日野町 飲食サービス業 従業員数3名 資本金100万円)

鳥取県日野町で株式会社四季が経営する「味処 四季」は、店名通り四季折々の地元産野菜を使った料理を提供。中でもちゃんぽんが人気で、行列ができる店として知られている。しかし、支援を進めるうちに、客入りは順調だが注文時と会計時に時間がかかりすぎてタイムロスが発生していることが判明。このことが引き起こす回転率の悪さが行列の要因のひとつにもなっていることから、支援者は回転率を高めるための注文会計業務のDX化を提案。経営者だけでなく実際に対応するスタッフからも理解を獲得し、本事例を成功に導いた。


本事例のポイント

【業務フローの観点から強みと課題を明確化】

昼時には既に行列ができており、店に特段課題は無いように感じた。そのため好調な時こそ次のアクションを起こすチャンスと考え、経営計画の策定を提案。ローカルベンチマークを活用し、「仕入」「仕込」「調理」「提供」の4つの視点から業務フローを徹底的に確認し、「地元産野菜を使っている」「お米は自家栽培」といった強みと、調理も提供も2人体制だが「注文間違いが発生している」などの課題を明確化した。

【経営者・事業・外部・内部管理の4つの視点から事業を分析】

経営者の視点からは、「ボリュームある料理で喜びと驚きを提供したい」「常に新メニューを考え売上を向上させたい」という想いが語られた。事業の視点からは「名物のちゃんぽんを求めて県外からも来店がある」といった強みや、「従業員と駐車場スペースが不足し待ち時間が長い」などの課題が浮き彫りになった。また、外部の視点からは「仕事で町外から来た人の昼食ニーズが高い」ことや「8割がリピーター客である」ことなどが強みとしてあげられ、内部管理の視点からは「メニュー開発について家族と毎日話し合いをしている」点が今後の成長の可能性としてあげられた。

当社の背景

1986年、父親が昼夜営業の居酒屋として創業。町内は大手企業の支店が多数あり、多くの需要があった。しかし、町の人口が減少し経済規模が縮小する中、企業も撤退していき居酒屋の需要と売上は激減。そうした状況の中でも昼夜営業を続けていたが、2019年に日野町商工会へ支援の依頼があり、昼営業主体の飲食店に事業転換することを決断する。2階にあった宴会場を潰して自宅に改装。ちゃんぽん等の麺類をメインに、和テイストな建物から明るいオレンジを基調とした店舗にした。2021年に現経営者である娘に事業承継、同時に法人化を行う。ボリュームのあるちゃんぽんがSNSで話題になり、昼は30分以上待つ人気店に成長し現在に至る。

支援の流れ

【課題解決に向けて経営者にヒアリングを継続】

傾聴と対話を重ねた結果、売上を増やすには客単価を上げるか客数を増やすしかないという結論に至り、客単価は簡単には上がらないため客数を増やす方法を優先的に考えることとした。その際、ホールスタッフのオペレーションの問題が浮き彫りになり、会計を中断して料理の提供を優先するため、その間に会計を待つ人が増え、料理も次々に出来上がって悪循環となっていることがわかった。また、麺類だけでもカスタマイズを含めると30通りの注文があり、それらを手書きで伝票に記入していることに加え、お客様自身も注文内容を勘違いしてしまうことから作り直しが頻発していることも判明した。

【顧客滞在時間を考慮した上でのDX化の導入】

現在お客様は平均40分、家族客においては1時間以上滞在していて回転率が悪く、地域柄車で来店することから駐車場に停められないと帰ってしまう人もあった。つまり、行列は人気ばかりでなく回転率の悪さにも原因があった。そこで、食券機の導入を提案。しかし食券をスタッフに手渡すタイプの一般的な食券機では時間削減に寄与しないため、タッチパネル式で写真を見ながら注文でき、会計後注文内容が自動で厨房スタッフに伝達されるタイプの食券機を提案し導入することとした。

【父親と従業員の理解を獲得するために】

DX導入前に策定したローカルベンチマークをもとに、父親と従業員に対してDX化が必要な理由を丁寧に説明し、オペレーションの変化も検証。地道に説得を続けることで、導入後に考えられる従業員からの不満にも事前に対処しておくことができた。機械が苦手な父親も、最後は経営者の娘に「やりたい事をやりなさい」との言葉があった。なお、導入への費用負担を軽減するために「小規模事業者持続化補助金」の低感染リスクビジネス枠を活用したことでスムーズに導入が完了した。

伴走支援の効果

DX化によって外での待ち時間の間に食券機で注文と会計を済ませてもらうことで、大幅な時間短縮に成功。席案内と同時に調理が開始できるようになり、お客様1人当たりの滞在時間が10分短縮する効果となった。また、お客様自らがパネルで注文しすぐに厨房へ自動伝達されることから、課題であった注文ミスは物理的に発生することがなくなり、お客様の手元に注文の控えが残るためお客様自身の勘違いもなくなった。お客様は外で待つ時間が減少し忙しい昼の時間を有効に活用でき、ホールスタッフは提供と片付けに集中でき作業効率がUPするなど、お客様とスタッフの双方にメリットが生まれた。さらに、支援者の提案によりメニューの英語表記とアレルギー表示を実施したことで、外国人客の応対も向上。導入後4ヶ月間で売上が前年同月比16.2%アップし、来店客数も前年同月と比べ283人増加しており、回転率が大幅に改善された結果となった。

 

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