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~任意整理と業容拡大を目指す玩具メーカーの法的支援~

北関東 卸売業、小売業 従業員数28名 資本金1,000万円

玩具、雑貨等の企画・製造・販売及び卸売業を営む当社は、取引先の倒産がきっかけで前社長時代の2006年頃に売上規模に匹敵する負債を抱えることとなり、中小企業再生支援協議会の関与のもとで10年以上に渡り自主再建を目指して経営改善を図ってきた。為替の影響を受けつつも、大手アミューズメント企業との取引を中心に利益を出せていたことが評価され、金融機関主導で抜本的な事業再生がなされることとなり、任意整理と業容拡大の同時追求のための法的支援を行った。


本事例のポイント

【過剰債務圧縮のための金融機関・スポンサーとの交渉の助言】

支援者は顧問弁護士として、当社の事業再生、債権回収、各種契約の助言等の法的支援を行っている。金融機関からスポンサーへの債権譲渡及びその後のスポンサーからの株式の買戻し等の重要局面においては、法的な観点からの助言に留まらず、経営改善計画・再生計画の内容にも踏み込んで、経営者の意思決定が合理的なものになるように、法律相談、国の再生支援制度や再生事例等の情報提供及び会計士・弁理士・弁護士・コンサルタント等の専門家紹介といった支援を提供してきた。

【各種ライセンス契約の検討・助言】

事業面においては、東京にある当社の営業拠点の社員から相談を受けて、キャラクターの商品化・肖像・商標の使用許諾など各種ライセンス契約にかかる契約書の作成を支援。権利者との商談における条件交渉の指南、取引先に対する債権の保全・回収などの支援を継続的に行った。この間、株主や社長の交替などもあったが、引き続き顧問弁護士としてサポートを続けている。

当社の背景

4代目となる現社長の伯父が、1959年に創業した同族企業。支援者は当社の同業の経営者から紹介を受けて、2012年に当社との間で顧問契約を締結した。当時の代表者である前社長が、ライセンサーとの取引関係を維持するために任意整理を希望していたことから、時間はかかっても法的整理によらずに過剰債務を圧縮する方法を探ることを提案。前社長からの信頼を得て、法的支援がスタートした。

支援の流れ

【任意整理を進めるための経営改善計画の策定支援】

任意整理を進めるにあたっては、主たる債権者である金融機関と交渉を続けながら本業の立て直しを図る必要があった。2013年、国から経営者保証ガイドラインが公表され、任意整理へのハードルが下がったことを受けて経営改善計画を策定する必要が生じたことから、会計士の助力を得て計画を策定。債権者との交渉を開始した。支援者は当社に対して金融機関への提案内容や金融機関からの弁済額の増額要求・担保提供要求等に対する返答などをアドバイスした。

【スポンサーとの株式の買戻しに関する出口交渉の助言】

しかし、債権者が法的整理でなければ債務免除は受け入れないという態度であったことと、本業の利益が一時的に縮小していたことから任意整理は棚上げとなった。2014年頃、業績が回復してきたのを受けて、暫定リスケの3か年計画を策定し、結果を出していたところ、改めて過剰債務の圧縮という抜本的な経営改善のための任意整理手続きを進めることとなり、コンサルティング会社の支援を得て経営改善計画を新たに作成し、任意整理の話し合いを進めた。当時は各地で中小企業の事業再生を目的とした官民ファンドの設立が相次いでおり、金融機関としてもファンドに対する債権譲渡による事業再生支援に前向きな雰囲気が醸成されるなど、任意整理の機運が高まっていた。事業再生専門の弁護士の助力も得ながら、債権者及びスポンサー候補との話し合いを進めたところ、地域金融機関から紹介を受けたファンドが支援を申し出たことから、自主再建に向けた手続きが一気に進んだ。支援者は、ファンドが提示した支援内容が当社および代表者を含むオーナー一族にとって有利になるように助言し、合理的な意思決定を支援。債権の売却後は、代表を退任した前社長らに対して再生計画の実行と株式の買戻しに関する助言を続け、2年後に現社長が地元金融機関の支援を得てスポンサーのファンドから株式を買い戻し、任意整理を完遂することができた。

【新たな事業展開に対する法的な助言】

当社は、ゲームやアニメのキャラクター等の版権を取得して、中国の下請工場で商品を製造し、日本国内の卸売業者やゲームセンターなどのアミューズメント施設に景品として販売することを主たる事業としてきた。長期間に渡る任意整理の取り組みの過程では、国内アミューズメント市場が縮小する一方で、インバウンド需要が増大。様々な環境変化に見舞われたことを受けて、他社との差別化を推進する必要に迫られ、他社が手がけてこなかった芸能人の肖像の商品化やYouTuberが取り上げた海外商品の国内販売権の取得など、新たな収益の確保に取り組んできた。それらの新たな事業展開についても、支援者は任意整理と並行して法的な助言を行った。

伴走支援の効果

代表者による適時・適切な意思決定のもと、金融機関、スポンサーの事業再生ファンド、紹介した事業再生の専門家らの助力もあって、過剰債務の圧縮と経営者一族による株の買戻しが実現。当社に有利な形で任意整理を成功させることができた。その結果、顧問契約締結時に約18億円あった債務は、リスケジュール中に返済した部分を除いて86%ほどカットを受けることができ、経営者の個人資産である前社長の自宅も手放さずに済んだ。
知的財産の商品化事業においては、芸能人の肖像ライセンスなど既存のゲーム・アニメのキャラクター以外の分野に対象を拡大することに貢献。また、国際取引に強い弁理士を紹介し英文のライセンス契約を作成したことで、外国企業との知的財産のライセンス契約に成功し、海外市場に販路を拡大する事業進出の準備を整えることができた。

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