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~事業承継に向けた経営者の決断と準備を株主関係の整理等でサポート~

愛知県 サービス業 従業員数10名 資本金1,000万円

所有する不動産の賃貸を主な事業としている当社は、近年売上が減少傾向にあった。経営者が高齢化する中、事業承継は利益改善のひとつの契機となりえたが、株式が分散し、少数株主への配慮から事業承継に向けた準備が進まない事態が続いていた。事業承継において、承継後の会社運営をスムーズに行うためには、事業後継者の持ち株比率を100%にしておくことが望ましいとされている。支援者は株主関係の整理を主とするサポートによって、円滑な事業承継を後押しした。


本事例のポイント

【傾聴と対話により経営者の悩みを引き出す】

当初は、経営者からの不動産賃貸に関する相談だった。傾聴しているうちに、株式等が分散し各株主がいろいろな意見を持っていることから、事業承継をするにしてもそれが悩みの種になっているとの話があり、株主関係の整理等でのサポートをすることになった。

【事業承継に向けた株式併合・端株処理の支援】

株式併合と端数株式の処理によって、株主関係を整理することができることを説明したところ、経営者は当初迷った様子だった。しかし事業承継の準備のためにはこれらの整理が必要であることを説明し、理解を深めてもらった。

当社の背景

大家として不動産を賃貸又はその一部を場屋営業(じょうおくえいぎょう)することで事業を繋いできた。場屋営業とは、集客を目的に客が利用しやすい設備を設けて、その設備を客に活用してもらうことを主とした営業スタイルを指す。しかし、場屋営業は時代の流れの中で流行りすたりがあることに加え、経営者が高齢化したことから収益改善を図ることが難しい状況になっていた。

支援の流れ

【株式関係の悩みを解消するための会社法に基づく提案】

経営者が以前から抱えていた株主関係の悩みは、株式等が分散していることが大きな要因のひとつであった。会社法においては、株式の分割又は併合により1株に満たない端数が生じる場合、端数を合計(合計数が1株に満たない端数である場合は切り捨て)して1株とし、競売するか裁判所の許可を得て任意売却するかして処理するものと定められている。

【スクイーズアウトを活用した株式併合】

端株処理によって親族等に分散している少数株式をスクイーズアウト(会社法の論議では「締め出し」という)できると説明したところ、経営者は「そんな魔法のようなことができるのか」と当初は半信半疑だった。また、法に基づく処理とはいえ、親族等の手前「そのような手続は角が立つのではないか」と迷っていたが、事業承継を実現するためには必要な準備であり、経営者の年齢のことを考えても今決断するのが相当であると説得し、経営者の決断を促した。

【株主総会決議のサポート】

支援者は、株式併合の株主総会決議の際には、会社側の事務局としてこれをサポートし、予定通り株式併合の特別決議を得ることができた。端数株式の処理については、会社法の規定に従って、任意売却手続を採用した。買取価格については、専門家に依頼して「非上場株式評価額報告書」を準備してもらい、その価格をもって株主に提案する。株主からは意見が出されたものの、妥当な価格で売却され無事決着した。

伴走支援の効果

株式が複数に分散されている場合、株主の意見がまとまらずに会社運営にリスクが生じることがある。当社が抱える問題も同じようなケースであったが、株式併合と端数株式の処理により、少数株主はスクイーズアウトされていなくなった。結果、経営者一人の意思決定による会社運営はスムーズになり、事業承継に向けての段取りが進んだ。

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